屋根の遮熱シートを調査しました。

ー屋根の遮熱シートもいろいろー

暑さ対策では屋根も大事!

 暑さ対策は、窓だけでなく屋根も必要です。

 私たちの最も得意な分野は窓の遮熱改修工事で、専門家の目線から見て、今はiQUEフィルムを推奨していますが、よく屋根の遮熱のご相談も承り、取り組んでいます。そして窓用の遮熱材料であるiQUEフィルムが飛びぬけて優れた遮熱効果を発揮する以上、そのパートナーとなる屋根用の遮熱シートも高性能でありたいものです。

 ですが、” 遮蔽係数 ” で性能さが正確に判断できる日射調整用のウィンドウフィルムと違って、遮熱シートの性能評価はあいまいです。

 そこで私たちは、2022年に開催された猛暑対策展( 東京 )に参加し、出展されていた5社から製品についてお話を伺い、頂いたサンプルを測定し、性能を比較してみることにしました!

屋根の遮熱シートは上に被せる?下に着ける?

 展示会場で各社様にお話を伺っていますと、ホントにたくさんのお話が伺えます。ですが、性能を示す専門用語が正確に統一されていないように感じられることもあり、また具体的なデータが開示されていないこともあって、実はちんぷんかんぷん!(笑)

 ただ大まかにまとめてみると、屋根の遮熱シートは新時代を迎え、2タイプの遮熱シートが検討できるようになったみたいです。でも、これらの製品の性能に順列を付けるとして、屋根の上に被せた場合と、屋根の下に着けた場合で、性能差は同じ順番になるのでしょうか?いくつかの過程のもとで実験をして、使い方の注意点を確認してみました。

屋根の上から被せるのにふさわしい機能の新タイプ

 各社様が主張される遮熱のメカニズムは、日射を反射する、熱を放射するなど様々で、ホントかどうか、どの程度かどうか、直接お話を伺った私にもよくわかりません(笑)。

 そこでまず、これらの遮熱シートを屋根の上に置いた場合を想定して、本当はどのあたりの赤外線をどの程度日射を反射するか、とりあえず太陽光の反射を考える上で重要な、2500nmまでの近赤外線領域までに限定し、まずは頂いた各社のサンプルの反射スペクトルを実測してみました。

 結果は、右上の通りになりました。製品によって反射スペクトルが様々であることがわかります。また、熱放射を謳うC社、D社の2製品は、一部の波長領域で反射率が 100% を超える不思議な現象?も確認されました。

 そこで、JIS A5759 の計算方法に従って、日射反射率を計算してみました。するとやはり、400nm ~ 1200nm の波長領域で反射率が高い順に良い結果になることがわかりました。この結果が、直ちに遮熱シートの優劣につながるわけではありませんが、少なくとも屋根の熱くなり難さの順列にはつながっていると思われます。

 屋根の遮熱改修技術は、日射反射率で単純に決まるものではありません。例えば、屋根下に設置する遮熱シートの場合は、そもそも日射反射率は関係なく、火照った屋根から室内への熱放射をどれだけ抑制できるかで決まります。他にも、遮熱効果の耐候性・耐久性も考慮する必要があります。( あくまでも私見ですが、汚れてしまった時の効果には懐疑的です。 )

 遮熱シートの優劣は、改修工事価格( 省エネ効果の投資回収効果 )の面からも検討する必要がありますので、様々な方面から分析を行い、本当に優秀な遮熱シートはどれか、今後も追加検討していきたいと思います!

新タイプは屋根の下に着けても効果的?

 遮熱シートを屋根の下に置いた場合はどうなるでしょうか?

 この場合、日射は直接屋根にあたりますので、その屋根が例えば金属製の折半屋根だった場合、まず屋根は熱く火照ります。経験的には60℃を超えることもあります。火照った屋根はその温度に応じた輻射熱を放射して、次に室内を暑くしてしまうわけですが、この時の放射熱は遠赤外線。日射熱の主成分である近赤外線とは全く別物と考えるのが正解です。

 遮熱シートはその多くが主成分はアルミニウムでできていて、赤外線の放射率も吸収率も低いことから、屋根の上に敷けば日射熱を直接反射して、屋根の下に敷けば、火照った屋根からの放射を抑えることができるので、屋根から入ってくる熱を予防できると一般的に考えられています。ところが新しいタイプの遮熱シートの一部はちょっと違う特性を持っているようです。

 それは遠赤外線の特性の違い。従来の遮熱シート(B社)と、新型の遮熱シート(C社)の特性の違いを比較してみましょう。一目瞭然で、B社は遠・近赤外線の両方で吸収率(=放射率)が低いのに対し、最新型の遮熱シート(C社)は遠赤外線領域の吸収率(=放射率)が高く変化しています。ただ、日射には含まれていない遠赤外線領域なら赤外線の吸収率が高くても、日射熱を吸収しません。ところが何かしらの理由、例えば日射をわずかに吸収して気温よりも高温になってしまった屋根からは、遠赤外線が効率よく放射され、その放射冷却の効果で屋根がさらに涼しくなる。新型の遮熱シートがこれまでよりも高性能になったのは、こういう仕掛けがあったからに他なりません。

 C社はこの性能をアピールして『日射を反射させるだけでなく、屋根の熱を積極的に逃がし、さらに涼しく』と謳っています。確かにその通りの優れた結果です。

 ただ、ホットプレートの様に熱せられた屋根の下に置いたり、太陽以外の熱源で使った場合はどうなるでしょう?早速、実際に70℃に熱したホットプレートに貼り付けて実験してみました。すると予想通り!アルミホイルや従来の遮熱シートでは放射熱が確認されず遮熱的であったのに対し、新型の遮熱シートはあまり効果が認められませんでした。新型遮熱シートは、あくまでも太陽に対しては非常に効果的な様ですが、太陽以外の熱源に対して使うときは、注意が必要です。

 屋根の遮熱を上からするか、下からするか・・・。この辺は好みが分かれそうですね。私は、遮熱性能の長期信頼性を鑑みて、汚れや風・雨の影響を危惧する観点から、屋根の下から工事する方をお勧めしていますが、あなたはどちらを選ばれますか?